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阿部泰治のパテック論 ~第6回目~

皆さんこんにちは。

気づけばもう5月も終わりますね。月の終わりということで、昨年は何があったかな?と考えていましたが、2019年5月といえば年号が「令和」に変わった月でしたね。コロナウイルスの影響で、色々な事を忘れそうになりますが、思い返すと時計業界の直近一年はものすごいトピックがあったように感じます。2019年6月~9月にかけた時計バブル崩壊、香港デモや韓国関係悪化による並行輸入品の品薄による価格上昇、そこに今回のコロナウイルスによる2020年2月~3月の大幅値下げ、また各社新作発表の見送り、海外オークションの中止等々、今までにない乱高下と異例づくしの一年だったと感じます。今後の実勢価格の動向は非常に見えづらいですが、ひとつひとつの商品と真摯に向き合うしかないのかな?とも感じている日々です。

少し前置きが長くなりましたが、私が出来ることとしては、皆さまに時計の有益な情報をお伝えしていくことです。今回は、前回に続き【アクアノート】について、主に現行モデルをメインに書いていきますのでどうぞお楽しみください。

アクアノート「Ref.5165A」「Ref.5167A

初代アクアノート「Ref.5060A」の誕生から10年経った2007年。第三世代にあたる現行「Ref.5165A」「Ref.5167A」が発表されました。

5167A/001

「Ref.5165A」は、第二世代のラージサイズを引き継ぐ38mm。「Ref.5167A」は新たなサイズのエクストララージという呼称で40mmのケースサイズで登場しました。エクストララージと聞くと、ものすごくインパクトがありそうですが、重厚感こそ増しましたが、正直特段大きなサイズには感じないな。というのが当時の私の印象です。

デザインは、無骨な印象が強い第二世代と比較すると、インデックスの数字は大きくなりましたが、目盛りは小さくなり、文字盤のエンボス加工も消え、よりすっきりとしたデザインになりました。全体的な雰囲気は、やわらかくなり、パテックらしさが出ているなと感じます。また、ストラップについても溝を浅くし、第二世代よりも全体的に洗練され、スポーティーでありながらもカジュアル過ぎないところはさすがのひとことに尽きます。

2008年にはエクストララージサイズのブレスレット仕様「Ref.5167/1A」が追加され、翌年2009年には、18KRG(ローズゴールド)ケースにブラウン文字盤仕様で、同色のコンポジットストラップを備えた「Ref.5167R」も加わります。

5167R

第二世代のYG(イエローゴールド)ケースと比較すると、RGケース採用により”華やかさ”が増したのではないでしょうか。

ちなみに第二世代のラージサイズを引き継いだ「Ref.5165A」は、約2年ほどで生産が終了したと言われています。コミットでも数本販売実績はありますが、市場での流通個体は少なく探されている方も多いのではないでしょうか。

余談にはなりますが、第二世代の「Ref.5065」と「Ref.5066」は、ケースサイズこそ違いましたが、ラグ幅は同じで、ストラップはなんと併用でした。対して、現行にあたる第三世代の「Ref.5165A」「Ref.5167A」は、ケースサイズはもちろん違いますが、ラグ幅も違いますので、ストラップはそれぞれ専用の物が用意されております。このあたりからも”現行”【アクアノート】に対するパテックフィリップの本気度が垣間見られます。

ムーブメントについても軽く触れておくと、「Ref.5167A」が出た当初は第二世代と同じ「Cal.315 SC」が搭載されていたのですが、そのわずか翌年2008年に高振動のムーブメント「Cal.324 SC」に変更となったのです。

アクアノート】派生コレクション

続いて、【アクアノート】の派生モデルについても触れていきます。2011年に誕生したアクアノート・トラベルタイム「Ref.5164A」。

5164A

昼夜表示付きの第2時間帯表示と、ポインターデイト機能による”スポーティ”でありながらもビジネスシーンでも使える時計。2016年には18KRGケース「Ref.5164R」も登場します。ゴージャスなイメージのゴールド素材ですが、パテックフィリップのRGはいやらしさがなく、文字盤とトロピカルストラップが同系色のブラウンのため、柔らかい印象を与えています。ちなみに自分には似合わないのですが、アクアノートの中では一番好きなモデルです。(笑)

翌2017年にはアクアノート20周年記念として「Ref.5168G-001」が発表されます。

5168G-001

レギュラーサイズの40mmよりひと回り大きくなった42mmの18KWGケース”ジャンボ”に鮮やかなブルーカラーの文字盤とコンポジットストラップが一層目を引きます。

更に翌年の2019年に、新色カーキグリーンの「Ref.5168G-010」が発表されます。

5168G-010

この文字盤とコンポジットストラップのカーキグリーンの組み合わせは、実は2010年〜2011年頃に上顧客のために「Ref.5167A」でごく僅かな本数を生産したことが元ネタとも言われております。まだ【アクアノート 】がここまで高騰してない時に、オークションで500万円オーバーで落札されていたのは業界に詳しい方は記憶に新しいかもしれません。これまた私的な意見ですが、ミリタリー好きにはこのマットなカーキグリーンの配色はとても魅力的に感じます。(笑)このあたりはコミットでも数本しか取り扱いが無く、まだまだ市場には出回っていない個体として、欲しい方が多いのではないでしょうか。

最後に2018年に発表された、コレクション初となるクロノグラフ仕様「Ref.5968A

5968A-001

ブラックのグラデーションが美しいエンボス・モチーフのダイアルに、鮮やかなオレンジ色のクロノグラフ表示(センター・セコンドおよび6時位置の60分積算計など)が立体感綺麗に醸し出しています。ブラックのコンポジットストラップと共に、オレンジ色のストラップも付属されており、全く違う表情も演出してくれます。なかなかお目に掛かれない、当店でも本当にすぐに売れてしまう人気モデルです。

まとめ

パテックフィリップといえば【ノーチラス】【アクアノート】と言わんばかりの人気モデルについて書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。私自身もこうして文字におこしていくと改めて気付くポイントや、カッコよさの再確認をさせられます。(笑)

結局どこにポイントを置いて選んで良いのか?もしかしたら逆に迷わせてしまっているかもしれません。ただ、やはり”良い”ものは”良い”んです。雲上時計と言われる所以が伝えられていれば本望でございます。

まだまだ伝えたい内容もありますが、それは来店頂いたときの楽しみに取っておいてもらえればと思います。次回からはまた違った側面からパテックフィリップの魅力について話していきますので、是非とも楽しみにお待ちください。

●この記事の執筆者
阿部泰治
コミット銀座 店主 銀座著名店で長きに渡り高級腕時計を取り扱い、2016年1月、コミット銀座を創業。 ロレックスやパテック・フィリップをはじめとした希少品やコレクターズアイテムを多数扱う実績を持つ。 時計本来の価値、時価を判断し、委託手数料の業界最安値水準を確立。

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