「エナメル文字盤」といえば、パテックフィリップのカラトラバやブレゲの5140BB/29/9W6をイメージしますが、それらに共通するのは「優雅なドレスモデル」といったところでしょう。
また、エナメル文字盤は手間がかかるためか、それが用意されるモデルの価格帯も高い印象。おおよその中古相場はどれも100万円以上という傾向があるように思うわけです。
しかし、このオメガ311.30.44.50.01.001はそういったイメージを覆す「エナメル文字盤」であるのです。
311.30.44.50.01.001を画像で見ると、すぐに「ムーンウォッチ」と思うわけですが、実はこの見た目で「エナメル文字盤」。ムーンウォッチといえば、オメガの大人気かつロングセラーモデルですが、その見た目で「実はエナメル文字盤」という意外性がこの311.30.44.50.01.001の魅力だといえるでしょう。
そういったことからなのか、この311.30.44.50.01.001の現在中古相場は、2013年の新品実勢価格よりも高い状況。かつての新品相場よりも、数年後の中古相場のほうが高いという現象は近年珍しくありませんが、スピードマスターこのような現象が発生するということは珍しいといえます。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
| 腕時計 | 状態 | 期間 | 2013年11月 の新品実勢価格 |
2020年7月 の中古安値 |
変動額 | 残価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
オメガ
スピードマスター 311.30.44.50.01.001 |
新品 | 6年 8ヶ月 |
¥452,733 | ¥500,000 | 47,267 | 110.44% |
この311.30.44.50.01.001というモデルは、2009年に登場したのですが、「期間限定生産」と記載されていることが多い印象です。
どうやら、販売個数を限定したモデルとして販売されたわけではないものの、生産終了年を予告していた模様。2013年時点でも新品入手難易度は高くなかったため、限定モデルといったキャラクターは弱いといえるでしょう。
オメガの場合、限定モデルが評価される傾向がありますが、それは「限定モデルだから」というよりも、限定モデルに尖った内容のものが多いからでしょう。
そういった意味では、この311.30.44.50.01.001も十分尖った内容であるため、評価されても不思議でないわけです。
ただ、スピードマスターにおいてエナメル文字盤が採用されたのはこの311.30.44.50.01.001が最初ではありません。
2007年に50周年記念モデルとして、1957本限定で登場した311.33.42.50.01.001にもエナメル文字盤が採用いるのですが、そちらは「手巻き」この311.30.44.50.01.001は「自動巻」となっています。
どちらも裏スケ仕様ですが、この311.30.44.50.01.001は、ムーンウォッチ的な要素を「見た目だけ」と割り切って、自動巻ムーブメントを採用しています。
その結果、
といったムーンウォッチでは採用できない仕様がてんこ盛り。むしろ、高級なムーンウォッチ的存在として、稀有な存在となっているようにも感じます。
ムーンウォッチ的な見た目で自動巻採用というのは、不人気要素となってしまいそうなところですが、コーアクシャル脱進機などはムーンウォッチに採用しづらく、最新オメガの売りを盛り込めないというジレンマがあるわけで、エナメル文字盤とともに、割り切ってそれを解消したというのは、尖った内容だといえるでしょう。
そういったことから、311.30.44.50.01.001はきちんと評価されているのだと思います。