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2020年7月6日更新

阿部泰治のパテック論 ~第15回~

みなさんこんにちは。

ものすごくタイムリーな話題ですが、昨日、一昨日でPHILLIPSの【THE GENEVA WATCH AUCTION:Ⅺ】が開催されました。

そこに、丁度前回書かせて頂いた【 パテックフィリップ 】” パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)・クロノグラフ、初代「Ref.1518」と後継機「Ref.2499」第二世代が出品されておりました。

*左「Ref.1518」右「Ref.2499」 参照:PHILLIPS

その落札価格がなんと、、、

「Ref.1518」
3,380,000 CHF(*スイスフラン)!!日本円に換算すると約3億8千万円!

「Ref.2499」
2,600,000 CHF(*スイスフラン)!!日本円に換算すると約3億円!

今の景況感を吹き飛ばすような結果、、、ちなみに今回は、時計業界では知らない人がいないほど有名なコレクターである『ジャン・クロード・ビバー氏』が出品した商品とあって、彼が出品した4本の時計は合計して9億3800万もの値をつけています。

世界の富豪たちは凄まじいなというのが率直な感想ですが、リアルタイムでオークションを見ていて(アプリで見れます)、少し興奮した2日間でした。

さて、今回も前回に引き続き【 パテックフィリップ 】” パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)・クロノグラフについて書いていきたいと思います。オークション程のインパクトにはなりませんが、是非最後までお付き合いください。

「Ref.3970」

前回のコラムでは、「Ref.1518」「Ref.2499」について書きましたが、今回はさらなる後継機「Ref.3970」から始めたいと思います。

ムーブメントはヌーヴェル・レマニア製のエボーシュ、「Cal.2310」をブラッシュアップし、近代的な設計の永久カレンダーモジュールが加えられた、手巻き「Cal.CH 27-70 Q」を搭載し、1万8000振動/時でパワーリザーブが約60時間と言われています。

1stシリーズ

ケース、文字盤の仕様、組み合わせについては諸説ありますが、自分が思うところでシリーズごとに書かせていただきます。「Ref.3970」は1986年から2004年まで製造され、1stシリーズは、裏蓋がスナップバック(はめ込み式)になっているのが大きな特徴です。文字盤は、あとのモデルと比べるとインダイヤルの2トーンが比較的はっきりしています。

*Ref.3970 1st 参照:Sothebys

よーく見るとインダイアルが若干クリーム色になっているの分かりますかね?(上記2枚を見比べると分かり易いかと)そして、小窓に表示される月と曜日の表記がセリフが無いクラシカルな印象で、インデックスはバトン型、針はリーフの仕様でした。おそらく一番クラシカルなデザインになっているのではないかと思います。製造個数も100本くらいと言われており、市場でも見かけることは少ないと思います。

2ndシリーズ
2ndシリーズは、裏蓋がスクリューバック(ねじ込み式)になり、シースルーバックではなく、クローズドバックのみの仕様でした。文字盤は初期のものと比べると、2トーンでなくなった点、小窓に表示される月と曜日のフォントがセリフ付きになった点などがあげられると思います。インデックスはバトン型で、針はリーフの仕様でした。

*Ref.3970 EG 参照:Christies

この後にイレギュラーなリファレンス「Ref.3971」が時系列的に挟まれると思います。裏蓋がシースルーでスクリューバック(ねじ込み式)のみの仕様です。その他、インデックスや針の仕様は2ndシリーズと同様でした。

3rdシリーズ
3rdシリーズは「ref.3970E」となり(Eとはetanche→フランス語で「防水」の意)、ねじ込み式で、クローズドバックとサファイアクリスタルのシースルーバックがセットで販売されるようになりました。【 パテックフィリップ 】の顧客より「ref.3970」モデルのスケルトンバックの個別注文が相次いだという話を受けて登場したとも言われてます。

文字盤ですが、インデックスがそれまでのバトン型ではなくトライアングル型となり、針もリーフからバトンに変わります。また、それ以外にも文字盤の濃度が若干濃くなり、このシリーズからWG(ホワイトゴールド)ケースとPT(プラチナ)ケースに黒文字盤×バーインデックスという仕様が登場します。特にプラチナケースに関しては人気が高いです。※プラチナケースには黒文字盤×ダイヤモンドインデックスもありました。

まとめ

自分が時計業界に携わり「Ref.3970」が注目され始めた頃、PTケースで黒文字盤×バーインデックスの仕様が市場で900万円(税別)くらいが相場だったのを覚えてます。そして、リーマンショック前には、1,700万円(税別)くらいまで上がりました。

尚、バックルについては3rdシリーズの途中までは尾錠タイプのバックルが使用され、1990年代後半のモデルから、フォールディングバックル(折り畳み式)が採用されています。

自分が過去に見たことがあるレアな仕様で、保証書にもアラビックと記載があるオリジナルで「Ref.5004」の文字盤が入っている物もありました。また、時計とブレスレットが一体化した「Ref.3970/002」もあり、好みが分かれるデザインではありますが、それも探すとなかなか見つからないレアな存在です。

*Ref.3970/002 参照:Sothebys

パテックフィリップ 】” パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)・クロノグラフは書き始めると、本当に様々な仕様が存在し、その其々に個性を感じさせる個体が多いです。今回お話しさせて頂いた「Ref.3970」も前回同様なかなかお目にかかれないモデルではありますが、ひとつでも何か参考となっていれば嬉しいです。

ということで、今回はこの辺りで失礼したいと思います。
次回はパーペチュアルカレンダー最終回として、現行「Ref.5270」などについて触れたいと思います。

●この記事の執筆者
阿部泰治
コミット銀座 店主 銀座著名店で長きに渡り高級腕時計を取り扱い、2016年1月、コミット銀座を創業。 ロレックスやパテック・フィリップをはじめとした希少品やコレクターズアイテムを多数扱う実績を持つ。 時計本来の価値、時価を判断し、委託手数料の業界最安値水準を確立。

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