「ロレックスブーム」といわれていたのは90年代後半のことですが、高級腕時計人気は、一時のブームで終わることなく、現在まで続く文化となったといえます。
そして、当時「高い」と感じた多くの腕時計が、今となってはその頃と比べ物にならないほど値上がりしている様子があるわけです。
99年頃、デイトナポールニューマンは300万円程度で「高い」という印象でしたが、今となってはその10倍ぐらいでも不思議ではありません。
また、その頃現行だったデイトナ16520は、90年代後半の新品実勢価格で100万円以上という水準。定価が65万円(税別)だったため、随分「無駄遣い」な印象があったわけですが、今となっては中古が200万円以上。決して“無駄”でなかったのです。
ですから、90年代後半と比べると、その頃人気だった多くのモデルが随分高くなった印象があるわけですが、中には例外があるといえます。
その頃の記憶がある私としては、当時の印象と比べて今随分お得感があると感じるのが、エクスプローラーの1016です。
2000年前後といった時代、エクスプローラー1016は、「憧れの高いモデル」といった印象がありました。
今人気のモデルで例えるなら、アクアノート5065/1Aなどという印象です。
しかし今、アクアノート5065/1Aが300万円以上である一方、1016は日本ロレックスの修理証明付きでも120万円台で入手可能という状態。2000年前後では、1016が100万円程度だったならば、5065/1Aの中古は60万円台後半ぐらいで狙うことができたため、両者の価格序列は大きく逆転していることになります。
実は筆者、その時代、1016に憧れながらも「ポストエクスプローラー」として、5065/1Aを62万円で購入していますが、今のアクアノートの様子を見ると想定以上に予想が的中してしまったと感じます。
また、現在の1016水準が2016年と比べて大きく変わっていないというのもかなり興味深い点だといえます。
現在、1016は5月水準よりやや上昇している様子なのですが、その上昇額は約7万円。5月水準は2016年とほぼ同等だったため、2016年と比べても7万円の差といったことになるわけです。
ロレックスのスポーツ系において、あまり変動していないミルガウス116400ですら、2016年水準と比べると20万円程度の上昇となっているわけですから、1016はかなり変化がないといえます。
ですから現在の1016は、
という点から、キャラクターを考慮すると安いと感じます。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
| 腕時計 | 状態 | 期間 | 2020年5月 の安値 |
2020年8月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
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ロレックス
エクスプローラー (日本ロレックス明細書) 1016 |
中古 | 0年 3ヶ月 |
¥1,200,000 | ¥1,275,000 | 75,000 | 106.25% |
では、なぜ1016が、“かつての「高い」キャラクターからして今相対的に安く、2016年からの変動も大きくない”といった状況であるにも関わらず変化がないのでしょう。
その答えとして考えられるのは、4桁ロレックス特有の「相場見極めが難しい」という点ですが、近頃1016は、比較的分かりやすい状況となっているのです。
例えばミルガウス1019の場合、日本ロレックスでのメンテナンスが難しく、各個体の判断基準が難しいといったことがありますが、1016の場合は今でもメンテナンスを行える模様。
実際、この記事の個体も1960年代製造であるにも関わらず、メンテンスカードの日付は2019年です。
ですから1016は、ロレックスでのメンテナンスが可能であるため、本物証明等がしやすく、相場も掴みづらい。
そして、今ではボトム価格の個体でもメンテナンスカードが付属するわけで、相場の分かりやすさは5桁に近いとすらいえる状態かと思います。
そういった意味では、1016が相対的に安いのはやはり謎と感じるわけです。
1016は現在約127万円で購入可能ですが、これよりも高いスポーツモデルは多々あるわけで、かつての価格序列を考慮すると、随分身近になったといえるでしょう。