M番のGMTマスター2が他のモデルと大きく違うのはムーブメントです。
通称ルーレットの採用もないため、見た目の違いとしては、90年代後半のシングルロックからダブルロックへの変更のような分かりやすい違いはありません。
M番の1つ前のZ番途中より、ムーブメントがキャリバー3186へと変化。
このムーブメント、ブルーパラクロムヒゲゼンマイへと進化したのですが、ブルーパラクロムヒゲゼンマイといえば、2007年に登場したミルガウスでも大きな売りの1つとされる、ロレックスの最新技術です。
奇しくもミルガウスが出たのは2007年であるため、ミルガウスの初期モデルもM番です。
ミルガウスというモデルを復活させたロレックスは、専用ムーブメントや緑クリスタルを開発するなど、かなりミルガウスに力を入れたようですが、デビュー時のシリアルナンバーがMだったのは、ミルガウスのMにかけているという噂もあるほどです。
2007年当時、幻の復活モデルであるミルガウスは緑ガラスが約180万円、通常の黒文字盤でも110万円程度とかなりのプレミア価格となっていました。
同じ頃、新品で売られていたGMTマスター16710は新品実勢価格が50万円程度だったので、2007年と2017年では、180万円と50万円という両者の価格がきれいに逆転したということになります。
ただし、2007年当時、どこでもM番の16710が平然と売られていたわけではありません。
とはいえ、探せば正規店にて定価で手に入れることも可能だったという事情も存在。
同じくGMTマスターでも「GMTマスター2」ではない「GMTマスター」の最終モデル、16700は最終品番のA番が高いということはありません。
よって、注目されていなかったGMTマスター2の最終モデルがこんなにも価値が出ると思った方はそんなには多くないでしょう。
確かに最終品番は価値が上がる傾向がありますが、2012年における70万円台という水準ですらびっくりな現象であり、まして現在の約180万円という価格は前代未聞です。
ちなみに2012年、M番が70万円台という相場だった頃、コンビのGMTマスター2の16713は38万円程度という相場。
つまり、その頃でもかなり高い相場だったのです。
しかし、不思議なのは、“2”よりも歴史的なモデルである「GMTマスター(1)」17600の最終モデル、A番は他の品番とさほど変わらない相場なのに、M番は飛び抜けて高いということ。
もちろん、M番はムーブメントが違うという差もあります。
ただ、ムーブメントが異ならない114270の最終品番である“ランダム番”も他の品番より20万円程度高いという事例もあります。
ですから、14270と114270のように、同じような見た目のモデルであれば、見た目が変わった際の最終モデルが高くなる傾向があるのかもしれません。
そうであれば、14270の最終であるP番と16700のA番が評価されていないのに、114270の最終品番であるランダム番、16710の最終M番が評価されているというのは理解できます。
とはいえ、デイトナのように116520と見た目が近い16520の最終であるP番が評価されている場合もあります。
ただし、デイトナの場合、16520はエルプリメロ、116520は自社製というムーブメントの違いがあります。
よって、ロレックスの最終品番が高くなる条件は、
- 大幅なデザイン変更が行われた
- ムーブメントが異なる
という点があるということになります。
このGMTマスター2の最終品番であるM番、2012年というロレックス全体がかなり安かった時期でも70万円台というかなりの高額な水準。
他の16710と違いが分からないM番を2012年において70万円台で買うというのは、よっぽどお金を自由に使える人でないと決断できない買い物だったでしょう。
しかし、70万円という割高価格で買ってもこのM番、なんとものすごい値上がりというリターンをもたらしてくれるとんでもないモデルなのです。
『趣味で馬主となったら、その馬がものすごく強く、儲かってしまった』
まさしくM番はそんな例えにぴったりでしょう。
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