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デイトナ116500LNは今買っても良いモデルなのか

その値動きの最も大きな要因こそ、トランプ政権の誕生です。デイトナGMTマスターなどスポーツロレックスの多くは2016年8月から10月にかけて値下がり傾向。しかし、アメリカの大統領選挙でドナルドトランプ氏の勝利が決まった後は、相場が回復傾向なのです。

2016年3月のバーゼルでデビューした116510LNが実際市場に出回り始めたのは2016年8月頃のこと。つまり、この新型がデビューした時期は、たまたま相場が安い時期に重なったのです。そして、10月頃に116510LNは最も安い相場となり、そこから今にかけて新品実勢価格は値上がり傾向です。

新品が値上がりすると、中古も連動して値上がりします。そのため、2016年8月の新品実勢価格より2017年4月の中古最安値(楽天)のほうが高いという現象が起こっている訳です。

では116500LNは買いなのか

デビューした年より、翌年の中古価格のほうが高いと116500LNの特殊な現象は、上記のような理由を紐解いていくと、そこまでのお買い得感は無いようにも感じます。しかし、116520の例を再度詳しく見てみると、実はデビューしたばかりの時期に新品で買っても値上がり状態という事例も存在します。

その例こそ、116520の白文字盤の相場変遷であり、デビューした年である2000年の新品実勢価格約128万円に対して、2017年4月の中古最安値(楽天)が138万円。つまり、デビュー直後の高い時期における新品実勢価格から17年後の中古価格のほうが10万円も高いという現象が起きています。

白文字盤といえば最近は人気の文字盤として、黒文字盤より高い相場ですが、数年前までは黒文字盤より安いというのが当たり前。実際2000年における116520の相場は黒文字盤と白文字盤で20万円もの差がある状況。そして、その常識は最近まで続きました。2016年3月における116520の中古相場は、黒文字盤が115万円程度、白文字盤が110万円程度という水準。それが、2017年4月では白文字盤の最安値が黒文字盤より10万円程度高い状況に変化したのです。

もしも、相場を比較するのが2016年であれば、どんな条件でも“デビュー直後の新品実勢価格より十数年後の中古価格が高い”ということにはなりませんでした。けれども、今の条件においては、白文字盤の116520に限ってそれが当てはまるのです。

116520がデビューした当時「明らかに高い」という印象を受けたのは、その値段を目撃したほぼ全ての人に当てはまることだと思います。そして、その2000年の印象と、2016年にデビューした116500LNに対するものは同じだと言ってよいでしょう。

つまり、これだけ「割高」と感じ、買う条件としてはあまり良くないと感じても、実は買っても良かったということもあるのです。

勿論、2000年において白文字盤のデイトナを買い、それを2017年というタイミングで売るという行為は簡単ではありません。しかし、「割高」と感じる時期に買っても値上がりする事例がある、ということに価値があるわけで、“デビュー直後は割高”ということをステレオタイプ的に判断するのではなく、きちんと考えて買うという行為ができる立派なきっかけとなるわけです。

そして、デビュー直後の高い時期に新品で黒文字盤を買って、2010年頃の安い時期に売却したとしても実は半分程度の価値が残るという見方もできます。

つまり、116500LNを今買うということは、116520の過去事例を参考にするならば、半値になるリスクと値上がりする可能性があるという事になります。もちろん、これは2000年にデビューした116520の事例を元にした場合であり、116500LNの動きが116520と同じものになるとは限りません。

投資的観点で消費することが重要

買ったモノの価値が時間に関係なく半分も残り、値上がりすることもある。

こんな消費財は他にあるでしょうか。例えば新車で車を買った場合、5年後には5分の1以下になってもおかしくありません。当然、その後価格が回復することはなく、30年ほどたった後に“走行距離が少ない”という条件付きで若干値上がりする可能性がある程度です。つまり、クルマは使ったら高くなることは基本的にありません。

つまり、腕時計を買うということは、「モノを買う」という行為の中で最も価値が残りやすい部類。そして、それを買うときこそ、車を買うときに「下取り」ということを当たり前に考えるように、「いつかは売るかもしれない」と思って買うことこそ重要です。すると、出たばかりのデイトナを買うという超贅沢が、実は新車を買うより贅沢でない、という事が分かるのです。

●この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。

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