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いつピアジェは評価されるのか(2)、アップストリーム自動巻

このアップストリームは、ピアジェにおける三雲スポーツ対策として2001年にデビュー。

三雲スポーツといっても、70年代からあるロイヤルオークノーチラスではなく、90年代に出たカジュアルなアクアノートオーバーシーズを意識したモデルです。

ピアジェには、スポーツを担う「ポロ」が存在しますが、それは70年代に登場したロイヤルオークノーチラスのライバルという位置。

当時、ロイヤルオークノーチラスがステンレスだったのに対し、ポロは金無垢のみのラインナップだったため「より豪華」な存在となっていました。

そして、90年代にパテックフィリップアクアノートを登場、ヴァシュロンコンスタンタンオーバーシーズを登場させ、70年代に登場したモノよりカジュアルな方向の三雲スポーツという存在が確立されます。

そしてその「よりカジュアル」なスポーツウォッチという役割としてピアジェが送り出したのが、このアップストリームなのです。

アップストリームが登場した2001年にはポロもモデルチェンジされましたが、金無垢のみというラインナップは変わりません。

つまり、この頃のピアジェにおいて、ノーチラスをより高級にしたのがポロ、アクアノートのようにカジュアルなのがアップストリームという位置づけだったのです。

これは非常に分かりやすいラインナップですが、ピアジェ自体が全く注目されていないため、だれもこの構成に着目しませんでした。

そして、ピアジェ自体も自ら主張するということが“邪道”であると考える体質なため、ポロとアップストリームの立ち位置を代弁してもらうマーケティングのようなことはしなかったのです。

そんな事情により、ほぼ注目されなかったアップストリームは、買いやすいピアジェであったにも関わらず、人気モデルとなることはなく、ピアジェは早々にシリーズを廃止。

すぐにモデルチェンジをしたり、シリーズをやめてしまうというのは、ピアジェの良くない点でしょう。

昨年2016年には、「ポロS」というステンレスモデルが新しく登場しましたが、ノーチラスに似ていると海外ジャーナリストにも指摘される外観は、「ポロ“S”」という紛らわしい名前も相まって、豪華金無垢モデルである「ポロ」自体のイメージも下げてしまいそうです。

良いものを作るピアジェというブランドに対し、もっと多くの時計ファンが注目すれば、ポロSのようなモデルが作られることは無かったと感じます。

●この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。

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