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実は面白い要素がある、タグホイヤーキリウムWL5110

キリウムは2000年代後半から既に5万円という価格になっており、現在の相場が既に10年ほど続いている状況です。

そのため、5万円で売られている時計という印象が強すぎて、

  • 定価30万円以上
  • クロノメーター仕様の自動巻機械搭載
  • という内容を忘れてしまいます。

    実際、今5万円で買える選択肢の中では最も定価が高く、その内容も自動巻クロノメーターであるため明らかにお買い得であることが分かります。

    また、キリウムにはクオーツ3針モデルも存在し、それが自動巻クロノメーターと近い額で売られているため、キリウムというシリーズ全体が5万円で買えるという印象になります。

    例えばオメガの場合、クオーツと自動巻クロノメーターの間には5万円程度の価格差があることも珍しくありませんが、キリウムの場合はクオーツと自動巻との価格差が1万円程度です。

    よって、このキリウムという時計、今5万円で買える腕時計の選択肢としてかなり面白い1本。

    時計の実力的にも、当時の価格的にも、当時のタグホイヤーの気合の入れようという側面でも、キリウムにはかなり濃い要素が詰まっています。

    ですから、いつでも5万円という印象のあるこのキリウムは、実はなかなか面白い時計であるのです。

    なおキリウムという時計は、LVMH体制になる前のタグホイヤーとして最後に企画された時計であり、防水スポーツウォッチがメインだった頃のタグホイヤーとしては最終コンセプトとなるモデルでしょう。

    そのため、様々な箇所にタグホイヤーの気合を感じるのです。

    特にデザインは、それまでのタグホイヤーのイメージを踏襲しつつ、他のブランドが採用していないような新しいデザインを採用。

    それでいて、針は前モデルの4000でも採用されていた伝統的な“ベンツ針”とするなど、随所に絶妙なバランス感覚が感じられる時計です。

    ちなみに、97年に登場した当初、針の形状が3針とクロノグラフとでは異なりましたが、2001年から3針モデルの針がクロノグラフと同じ形状となります。

    また、当初はクロノグラフモデルはクオーツのみでしたが、99年に自動巻クロノグラフが追加。

    機械式モデルのキリウムは2004年頃生産終了となったため、機械式モデルが生産された期間は短く、現在でも機械式クロノグラフのみ10万円近い価格帯となっています。

    プレカレラ時代における最後のタグホイヤーであるキリウムは、海外での評価もそこそこ高く、5万円で売られている腕時計ながら、実はかなり強い要素を秘めた時計であるのです。

    ●この記事の執筆者
    斉藤由貴生
    腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。

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