パテックフィリップにおいて6桁世代相当より5桁世代相当のほうが安いという理由は、時計本体だけを見ても分からないため、その周辺を取り巻く環境や時代の変遷を考察する必要があります。
ややこしい話なのですが、ロレックスの5桁世代に相当するパテックフィリップは、現行だった時期はロレックス5桁と同一でもキャラクター的には4桁ロレックスと同一という見方もできるのです。
2000年代前半までパテックフィリップ(5桁世代相当)は「雲上」と言われていたものの、多くの人にとって購入の選択対象ではありませんでした。
ある意味「リアル雲上」とも表現できるブランドだったといえますが、言い方を変えると「マニア向け」とも表現できるかもしれません。
一方、2005年頃からのパテックフィリップ(6桁世代相当)は、20代や30代というような若いリッチ層でも顧客となるような存在であり、「マニア」から「マス」に変化しています。
実際、筆者の周りを見ていても、メディアを見ていても、かつてではパテックフィリップに興味を持たなかったような30歳前後のヤングリッチ層にパテックフィリップが浸透している様子があります。
ですから、5桁世代相当と6桁世代相当ではキャラクターが異なり、結果的に相場も違うのでしょう。
ではなぜ、キャラクター的にはロレックス4桁世代ともいえる2000年代前半以前のマニアックなパテックフィリップが、ロレックスのように「アンティーク」や「80年代ヴィンテージ」というような評価を受けないのでしょうか。
おそらくそれは、まだ90年代パテックが「遠い存在」となっていないからでしょう。
ロレックスのように「ドーム型プラ風防」や「フチなし」という分かりやすい要素があった場合、『そんなモノがあったのか』という意外性を感じることができます。
しかしながら、2000年代前半までに現行だった3000番代や5000番代のパテックフィリップからは、そのような「意外性」を強く感じることができず「遠い存在」という文脈に至らないのだと思います。
とはいえ、5桁世代相当のパテックフィリップに魅力がないかというとそうではなく、その年代でしか味わえない要素も存在します。
そして、その良い要素をうまく表現できる文脈が見つかれば、5桁世代相当のパテックフィリップがロレックス4桁のような評価を受けるのかもしれません。
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