マニュファクチュールでコンプリケーションというジャガールクルトのマスタージオグラフィークは、2010年代前半頃まで、5桁ロレックスよりも高い価格帯といった印象でした。
実際、5桁が現行だった2000年代前半、この142.8.92水準は、当時のロイヤルオーク14790STと同じといったところ。デイトナを除くSSロレックスよりも高く、いわゆる「贅沢な選択」といった感覚があったわけです。
けれども、2010年代後半になると、142.8.92の中古相場における立ち位置は「そこまで高くない」という状態に変化。多くの腕時計が上昇するなか、この142.8.92はあまり値動きしない傾向が続いていたため、他に抜かされてしまったのです。
実際2020年になってもこの142.8.92は、50万円台で購入可能だったわけですが、「マニュファクチュールのコンプリケーションモデル」という観点からすると、バーゲンプライスといった印象になります。
当時ももちろん、そのような相場である142.8.92を『お得なモデル』として取り上げたのですが、それからもしばらく142.8.92は目立った変化がない状況でした。
しかしながら、2022年の今、ようやく142.8.92に変化の兆しが見られる状態となっています。
142.8.92は、現在86万円となっているのですが、これは2020年7月水準に対して、約31万円の上昇であります。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
| 腕時計 | 状態 | 期間 | 2020年7月 の安値 |
2022年4月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
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ジャガールクルト
マスタージオグラフィーク 142.8.92 |
中古 | 1年 9ヶ月 |
¥549,780 | ¥860,000 | 310,220 | 156.43% |
見た目の格好良さといい、マニュファクチュールのコンプリケーションといった中身といい、この142.8.92は抜かり無いモデルだと思いますが、そうであるにも関わらず、これまであまり相場が変わらなかったわけです。
今回、ようやく142.8.92は、50万円台⇒80万円台という変化を見せたわけですが、値動きするのが遅かった結果、これでもまだ、2000年代に142.8.92よりも安価だった5桁ロレックス水準には届きません。
30万円単位の上昇といった値動きは、142.8.92の相場を長期にわたって追っている筆者としても「前代未聞」なほど“すごい”と感じる反面、まだ他と比べると相対的に高くないという側面が142.8.92にはあります。そういった意味でも、今後142.8.92がどういった評価になっていくか興味深いと感じます。