チューダーのクロノタイムといえば、「古いモデルほどロレックスとの共通要素が高い」という傾向があります。
その「共通要素」というのは、ブレスレットの形状や配色といった“見た目”だけにとどまらず、古いモデルほど、ロレックスそのもののパーツが使われている、という具合です。
逆に、新しいと「ロレックスから遠くなる」わけですが、その最たる事例が1998年頃に登場した「タイガー」であります。
この「タイガー」というのは、タイガーウッズの“タイガー”。当時タイガーウッズは、スーパーゴルフプレーヤーとして世界中で大人気となっており、日本でも缶コーヒーWONDAのCMなどに登場していました。
ただ、人気だからといって、個人名が高級腕時計の名称に使われることは珍しく、まして当時23歳だったウッズが高級腕時計のモデル名として採用されるというのは前代未聞だったといえます。
「DAYTONA」のごとく、文字盤上に刻まれる「TIGER」の文字ですが、その由来がタイガーウッズだというのは、「そのタイガーだったのか!」なることでしょう。
さて、そのタイガー世代には、5連ブレスレットや黄色、緑といったカラフルな文字盤色が採用。もちろん、ロレックスパーツの採用はありません。
そういったことゆえ、2021年頃までタイガー世代は、「最も安価なクロノタイム」となっていたわけです。
しかし、2022年になると黄色や赤など派手な文字盤のクロノタイムが評価されるように変化。そういった文字盤色を採用しているのは「タイガー」しかないわけで、この頃から「タイガー」の立ち位置が変化したといえます。
その頃、黄色文字盤などのタイガーは、ロレックスパーツが使われているクロノタイムと近い水準となっていたのですが、こういったことは2010年代後半まででは考えられませんでした。
ちなみに、2017年頃の感覚だと、ロレックスパーツ世代が80万円台だった一方、タイガーは25万円前後だったわけで、両者の相場はかなり離れていたのです。
それが2022年において、両者の差が10万円程度となっていたわけですが、なぜそうなったかというと、タイガー世代が伸びた一方で、従来から高値だったロレックスパーツ世代が伸びなかったからであります。
ここのところのクロノタイム相場においては、そういった傾向があるため、「ロレックスパーツ世代はあまり相場が変わらない」という印象があるといえます。
しかしながら、ロレックスパーツ世代でも、実は2021年から現在にかけて伸びているモデルが存在。
それがこの94300であります。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
| 腕時計 | 状態 | 期間 | 2021年3月 の安値 |
2025年5月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
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チューダー
クロノタイム 94300 黒文字盤 銀インダイヤル |
中古 | 4年 2ヶ月 |
¥935,000 | ¥1,121,850 | 186,850 | 119.98% |
94300は、クロノタイムの初期モデル。登場したのは1970年代後半で、ロレックス4桁、もしくは80年代ヴィンテージ世代に相当します。
最も古いクロノタイムということもあり、ロレックスパーツの採用は多く、この94300の竜頭とバックルにはロレックスの王冠マークが存在。
この世代のチューダー事情を知らない人が見たら、「ロレックスじゃないのになぜ?」となることでしょう。
また、94300のケースはいわゆる「カマボコケース」と呼ばれる分厚いタイプなのですが、デイトナ初期世代にも採用される「カマボコ」は今となってはとても人気な要素の1つであります。
80年代といった年式の自動巻クロノグラフゆえ、この94300はカマボコケース仕様となっているのでしょうが、これもまた現在の感覚では大きな評価ポイントだといえます。
そういったことゆえに、この94300は2021年時点でも他のクロノタイムよりも高値だったのですが、そこから現在までにかけてもきちんと上昇しているのです。
94300の現在相場は、クロノタイムのボトム価格としては、唯一100万円超え。かなり評価されているといえます。
ただし、この世代独特の雰囲気を持つモデルとしては、他ブランドと比べるとまだ「お得感がある」ともいえる部分も存在。
筆者としては興味深い1本だと思っています。