かつてのノーチラスには3針モデルのラインナップしかありませんでした。
初のコンプリケーションモデルは2005年に登場した3712ですから、90年代後半の時計ブームの際でも“ノーチラスといったら3針モデル”という印象。
厳密には1997年に登場したノーチラスパワーリザーブがあったのですが、シンプルなパワーリザーブインジケーターは、機構こそ特殊なものであるものの、見た目の印象としてはコンプリケーションというより3針モデルというイメージが近いです。
そして、2006年に3712は5712となり、クロノグラフも登場。
それ以降は年次カレンダーも追加され、ノーチラスのラインナップはだいぶ増えました。
ですから、今となってはコンプリケーションモデルの存在は、ノーチラスにとって何ら珍しいものではありません。
そして“憧れ”の対象として、かなり高い相場を維持するノーチラスのコンプリケーションモデル。
この5712は、同じ機構の5085/1Aと比べてだいぶ高い相場です。
本記事の価格比較
| 腕時計 | 状態 | 期間 | 2011年12月 の安値(ヤフオク) |
2017年3月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
パテックフィリップ
ノーチラス 5712/1A-001 |
中古 | 5年 3ヶ月 |
¥2,980,000 | ¥3,680,000 | 700,000 | 123.49% |
左右非対称に配置されたパワーリザーブインジケータとムーンフェイズが特徴的なこの機械は90年代より5085・5055・5054の3兄弟に搭載されていた存在。
そして、2005年にこの5712の前身である3712に搭載され登場した際は、非常に驚いた印象がありました。
というのも先のようにこの機械の印象は、5054などの3兄弟専用という印象があったのと、ノーチラスにコンプリケーションが投入されたというのは違和感があったのです。
3針モデルしかないというのは、イメージ的にはロレックスとキャラクターが似ており、まさしく「パテックフィリップのロレックス」という存在にピッタリでした。
コンプリケーションを導入すると、そのロレックス的な印象は薄れてしまうため、ノーチラスの個性が薄まり、不人気となる危険性がありました。
しかし、結果は大成功となり、今でもノーチラスのコンプリケーションモデルは世界中で人気のある傾向です。
よって、5085など3兄弟時代に搭載されていた機械は、ノーチラスに搭載されたことでより一層価値が高くなるということを証明したのです。
とはいえ、現在の相場はシンプルな3針とあまり差がない状況です。
本来コンプリケーションのほうが3針よりずっと高いのにも関わらず、現在両者の価格差は大差がありません。
まして、青文字盤の3針モデル(5711/1A)と比べた場合、なんとこのプチコンプリケーションモデルのほうが安いのです。
時計相場が全体的に安かった2011年の水準だと3針モデルの5711は約140万円程度。
同じ頃、この5712は298万円ですから、両者の価格差は158万円もあったのです。
しかし、その158万円の価格差が、今となっては0円になるどころかマイナス状態に。
もちろん、5712も2011年と比べて値上がり傾向なのですが、同じ頃もっと安い3針モデルを買っておけば、凄い値上がりとなったわけです。