とはいえこのエリプス、長らく40万円前後で取引されており、今でも個体と程度によっては30万円台で売られていることもあります。
よって、50万円台で買うという行為にはそれなりのリスクも感じます。
ただし、30万円台の個体は傷んでいるというリスクもあり、修理費用のリスクを考えた場合、この50万円台のきれいな個体が妥当な金額だと感じます。
パテックフィリップは「永久メンテナンス」というイメージが強いですが、20年以上前のモデルはスイス送りの修理となり膨大な費用がかかります。よって、程度の悪い個体を買って5万円程度のメンテナンスでピカピカになってしまうロレックスとは事情が違うのです。ですから、エリプスの場合、50万円台で売っている個体を買う意義があるのです。
また、独特な世界観を持っているエリプスは、かつてのノーチラスのようにも感じます。
ノーチラスは今でこそ「高い」「人気」というイメージですが、かつてはかなり微妙なパテックフィリップとしてあまり人気のあるモデルではありませんでした。
けれども、2005年前後よりノーチラスの世界観の良さを多くの人が気づき始め、一気に値上がりしたのです。
ですからゴールデンエリプスに関しても、今後同じような現象が起こる可能性があるのです。
また、エリプスは、パテックフィリップが時計販売店の店頭用置き時計に採用するなど、パテックフィリップ自身が自らを象徴するモデルとして位置づけているのです。
これだけ個性的なエリプスという存在ですから、パテックフィリップ自身がそのような位置づけとするのも理解できますし、エリプスという時計は知れば知るほど深みがましてくる魅力的なモデルです。
なお、50万台前後で購入可能なモデルは、80年代頃までに生産された3848で、横幅が27mmというかなり小さなサイズ。
エリプスと同じ時期のカラトラバ96も30mm程度であったため、その頃のパテックとしては標準的なサイズですが、今となってはかなり小さめかもしれません。
しかし、これだけ個性的なモデルですから、小さくても充分主張しているようにも思います。
現行モデルは横34.5mmとこれよりだいぶ大きくなっていますが、エリプスの独特な丸いベゼル部分のデザインは横27mmでも34.5mmでも強い個性があることに変わりはありません。
ちなみにゴールデンエリプス、ノーチラスと同じで青文字盤がメインカラーですが、現行モデルで青文字盤+ホワイトゴールドの組み合わせはありません。
青文字盤とシルバー色のモデルが良ければプラチナモデルを買うしかなく、かなり値段が張ることに加え、とても大きなモデルとなってしまいます。
それに対して、50万円台で買える3848は腕の収まりも良く、時計を装着しながらキーボードを叩いても気にならないぐらいつけ心地も良さそうです。
なお、各モデル同じように見えるエリプスですが、近代的なモデルとクラシックモデルでは相場が違うので要注意。
両者の違いは、搭載するムーブメントが手巻きの215(それより古いのも含む)を搭載しているか自動巻の240を搭載しているかの差なのですが、最も簡単に見分ける方法は竜頭の大きさです。
この記事の個体、3848のように竜頭が大きいモノは手巻きで、小さいモノは自動巻です。
そしてその小さな差によって、50万円台と120万円以上という相場の違いが存在するのです。
なお近代的なゴールデンエリプスの中古流通はあまりありませんが、出たらすぐに売れてしまう傾向があります。
近代的なモデルが人気の一方、この手巻きモデルは異常なほど安いという状況です。
これほど個性的なパテックフィリップの世界をじっくりと味わえるこの時計、50万円台で手に入るのは今のうちかもしれません。
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